⑦パンツとグランスの関係

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人新世のパンツ論〈花鳥風月編〉

ジェントルマンでいたいなら、パンツに学べ

 

ぴっちりとしたパンツを穿くと、だいたいクッキリしちゃいます

 
 「人新世のパンツ論」の前シリーズから閲覧いただいている有志の方々なら、既にお気づきだと思われるが、私の様々なパンツ姿を見て、アレが、くっきりとえげつなく輪郭を露わにしているのがわかるだろう。
 
 少し大きめな、グランス(Glans penis/陰茎亀頭)の形の発覚――。
 

仮性包茎は包茎ではない

 男性性器――ペニス(Penis)の話でいうと、日本人男性のおよそ7割が平時、グランスが包皮に包まれていて、その実は表からは見えない状態なのだということ。
 その7割というのは俗説である――というよりかは、かなりリアルな話なのである。過去に遡れば、ある種の専門的な方々が実際に調査をしてお調べになった統計値であり、それをおおむね信用する以外にない。
 ちなみに、全体の1割程度の男性が、手で包皮を剝くことができない包茎(真性包茎)だということで、その場合はなんらかの施術が必要なのだけれど、これに当てはまっていない人たちも、自分は包茎ではないのかと不安に思う殿方が、なんとも日本人には多い。
 
 それは、まやかしの歴史があったせいだ。
 包茎ではないほとんどの人達の正常なペニスを、ある業界が悪知恵を絞って「仮性包茎」などと名付けたために、混乱が生じたのだ。
 医学的には、「仮性包茎」などというものはなく、単に正常なペニスである。包皮を自分で剥くことができ、グランスが容易に露出する状態であるが、これを“仮性”の“包茎”と称したことで、患者が著しく増えた――というわけである。誰が儲けているかは、いうまでもない。
 
 そんなまやかしではなく、本当のところは、統計上およそ9割の人のペニスは正常であり、クリニックに駆け込む必要はない。
 詳しくは、私のサイト[男に異存はない。性の話。]の「奈良林祥の『性についての方法』―包茎と自慰の話」を参照してほしい。
 

露茎は悪魔の紋章か

 

行き過ぎたペニスいじり

 女性からすれば、あまり詳しく知らない男性性器の見栄えの問題だと思うので、少しじっくりとペニスの形について話をしたい。
 
 幼少期の男の子たちのペニスは、概ね、グランスが包皮に包まれたままになっている。
 男の子たちはけっこうおちんちんをいじるのが普通なのだが、それは悪いことではなく、自分の体の一部をいじっているに過ぎない。だんだんとマナーというのを学んでくると、人の居るところではいじらなくなるだけの話であり、大人になっても男性は、人の居ないところでペニスをいじることは、よくある。
 ただし、子どもたちの場合、汚い手で触ることもままあるので、そのため、包皮がグランスを包み込んで尿道口を保護してくれているのである。
 
 ある程度の割合で、包皮を剥いてグランスを露出させることができる子どもたちもいる。大概においてそれは、保護者が“やってくれている”ありがたいことなのだけれど、なぜそうするかというと、後々のことを考え、将来この子が包茎(真性包茎)にならないようにと、「予防」の観点であらかじめ子どものうちから剥いてしまっているのだ。
 
 子どもの性器への衛生的な懸念が「予防」という観念を生み、またクリニックの先生たちもそれは正しいことだ肯定し、まことに行き届いた「ご立派な保護者」が増えた。でもちょっと、子どもを、いじりすぎている気がする。
 子どもの成長を気にするのは保護者としてあたり前。しかし、ちょっとお節介過ぎるのではないか。
 
 子どもたちにも人格があり、人権がある。
 海外ではたぶん今でも、子どもの頃に割礼(宗教上の理由で包皮を切除すること)をされた男性たちが、親や保護者を訴え、「勝手に人のペニスをいじるな」といったメッセージを掲げ、人権侵害の問題で取り沙汰になっていたりする。
 親であろうと保護者であろうと、子どもの体を勝手にいじることは許されない――という観点を無視していないか。
 
 男性性器のペニスは、成長期の中学生くらいになると、それ自体の大きさが太く大きくなってきて、全体の色つやも黒ずんでくる。グランスを包み込んでいた包皮の癒着もゆるんできて、グランスの先端部(尿道口)が見えるようになる。この段階で、包皮を剥いて後転させ、グランスを露出させることが容易になるのだ。
 
 なので、大人は子どもに、自分のペニスを剥いて洗って清潔にしておくことを教えるだけで、いいのではないかと思うのだ。自分の体のことは、極力自分でケアする。自分の体は自分で守る。勝手に人のペニスをいじるな。
 大人はもっとそれ以外のこと――すなわち自分の体のメタボだとか、自分の顔の修整具合を気にかけてほしいのである。
 

露茎の天使に憧れて

 ところが、問題は他にもある。
 7割の人が平時、包皮が被ったままであると先に述べたが、そのことによって、その皮かぶりのペニスがひどく「男として格好悪い」という風説が、戦前戦中あたりから蔓延し、露茎(平時からグランスが露出していること)への憧れ――なるものが醸成され、いわば完全露茎の者は天使なり――といった具合に尊敬の対象となったのだった。
 
 だから、7割の人たちは、自分も「露茎である」ことを「偽る」ことが少なくない。
 
 実にバカバカしい話なのだけれど、この7割の人たちがいちばん苦労しているのは、銭湯や温泉などの大衆浴場で、裸になる前にこっそりと包皮を剥いておくこと――なのだ。
 そうして「露茎の天使」を偽って風呂場を悠々と歩き、自分が皮かぶりではないことをあからさまに見せびらかす。こうした男たちのほとんどが、思春期から20代にかけて、裸の自分の様相に対し、涙ぐましい努力をしているのだった。
 

明らかに露茎であることがわかるパンツ姿

 

私はいつ剝けたのか?

 ここからは一般論ではなく、自分のペニスについてカミングアウトしたい。
 自分の場合、平時から露茎である。
 
 いかなるシチュエーションであっても――例えば最も寒くて凍える冬の時期においても、包皮が縮まろうがなんだろうが――私のグランスは露出している。
 ただし、自分で包皮を被せることはできる。ほとんど意味のないお遊びに違いないが、包皮を被せた場合、5分も経たないうちに、後転し、グランスが露出してしまうのだった。
 
 私個人に限らず、おそらく露茎者の多くは、無神経なくらいに自分が「露茎の天使」であることにも意識せず、むしろ否定的であり、小悪魔を抱えているとさえ思っている。
 

揉んでたら剝けちゃってた?

 初めて剥けたのは、中学3年の時だった。
 
 子どもの頃から私は、「陰嚢(いんのう)を揉む」のが好きで、今でも布団に入って寝る時には、陰嚢を揉んだりしている。陰嚢ってつまり、キンタマ袋のこと。
 性的欲求を満たすと同時に、性的欲求を緩和しているともいえる行為で、次第にリラックスし、そのままうとうとと眠ってしまうくらいに心地良くなるのだった。そうした時、性的欲求はどこかへ消えてしまっている。
 
 中学3年の、冬の午後。
 
 ちなみに、須川栄三監督の映画『螢川』(1987年)が公開されてから十数か月後。あの映画の主人公が性の目覚めで毛が生えたとか、夢精だとか手淫だとかでうろたえるのとよく似ている…。
 
 私はストーブの火で暖まりながら、布団の上で昼寝をしていた。そしていつのまにか、陰嚢を揉み始めていた。
 だんだん気持ち良くなってきたので、ブリーフを脱いだ。既にペニスは硬くなっていた。その後、異変が起きた。
 
 ペニスの先の形が、おかしいことに気づいたのだ。いつもなら包皮がクチュっとつぼんでいるのに、どういうことか見たこともない形になっていた。
 
 ぎょっとした。包皮が剥け、グランスが丸々露出していたのだ。
 
 グランスは、まるで戦国時代の武将が戦で被る「兜」(かぶと)のような形をしていて、赤く火照っていた。包皮はすっかり後転し、自分のペニスがヤバい状態になっていることに恐怖を感じたのだった。
 
 チンコの中から、出てはいけないものが飛び出てしまった――。エイリアンがそこから生まれでてくるかのように。
 私には性器の知識がまるでなかったのだ。確かに学校で、クラスメイトたちが「剥ける」だのなんだのと会話を交わしていたのを耳にしたことがあった。が、それがなんのことかさっぱりわからなかった。そうして今、自分のペニスに異変が生じて、はじめてそれが理解できた。「剥ける」とは、このことだったのだと。
 

平時も私のグランスは露出したまま

 

露骨さが逆に恥ずかしい?

 高校を卒業するくらいまでは、平時、グランスは被っていたり出ていたりしていた。しかし、卒業後に包皮が後転したまま戻らなくなり、グランスはずっと露出したままになった。
 
 その頃はまだ、自分はトランクス派を決め込んで穿き続けていたので、あることに気づかなかった。やがてトランクス派を転向し、ボクサー型のパンツを穿き始めると、それはあまりにも顕著な悪魔の紋章となった。なんと自分のパンツ姿を眺めれば、くっきりとグランスの形が浮き出ているではないか。私はそのことが逆に、気まずいくらいに恥ずかしかった。
 
 グランスが平時、露出しているメリットはあるのだろうか。
 こういったことが挙げられる。
 

  • 包皮が湿っていても、後転しているため、グランスはある程度清潔さを保っていること。
  • ほとんど臭わないこと。
  • トイレの時、包皮を剥く手順がそもそも無いため、おしっこがしやすいこと。
  • 包皮が被っていると残尿でグランスが湿り、臭くなるということがあるが、それがないこと。
  • ヘアに絡まれる率が少ないこと。

 
 デメリットについても挙げておこう。
 

  • 常にパンツの中でグランスがこすられているため、性感帯としてのグランスの持ち味は半減する。ただしその場合でも、グランスの裏側は性感帯としてじゅうぶん機能する。
  • グランスが常にこすられるため、勃起して大きくなりやすい。
  • こすられて気持ちよくなれば、当然、我慢汁(カウパー液)が出やすくなる。
  • 露茎者は残尿でパンツを汚すよりも、我慢汁で汚す率のほうが高い。

 
 幼少期では、グランスは包皮によって保護されている――と書いた。露茎となってからは、良質で最適なパンツによってグランスを保護しなければならない――という観点が必要である。
 パンツはあらゆる面で過小評価されがちだが、「清潔を保つ」ことと「性器の保護」という役目があることを絶対忘れてはならない。パンツ選びでは、おしゃれだけではなく、《男性部》を守ることも大事なのだ。

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